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【映画感想】ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章 分かっちゃいたけどつまらない




通常2Dで観てきました、『ジョジョ』。

都内某所のシネコンで休日昼間、しかも「話題作ジョジョせんぱ~い」の初週末。もちろん混雑してるだろうと思ったけど…あれ~?って感じの客入り。前半分はガラガラでした。
映画ファンはもっと地雷を踏みぬく覚悟が必要ですね。

シネコン邦画ではよくあることだけど、例のごとく予告編の時間長すぎ…。新感染のDHCみたいな字幕は親の顔より見た風景。
『打ち上げ花火、下から見るか 横から見るか』(略称どうなるんだろ)のロング予告は初めて見たのでそこは収穫かな。
君の名は。』の「2匹目」だと思ってたけどこれ観て印象変わりました。

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オタク寄りだった1匹目と違って、より若い女性向きの恋愛ものに仕上げてきている印象。昨今の若手俳優マイムマイム的な恋愛ものが、ついにアニメに踏み入ってきたという感じ。菅田将暉広瀬すずだし。
同じプロデューサーだけど敢えてテイストを変えてきたということはこっちの方が売れる!と判断したのかしら。



で、本編ですが、感想を簡潔にまとめるなら、「原作へのリスペクトは感じられるけど、それが足を引っ張っている」という感じ。

ほぼコスプレな見た目の再現度(特に髪型)と、割と頑張ってるCGによるスタンド表現、そして台詞や小物から感じられる原作再現の意思。
そういう細かい部分ではグッとくるものもあったし、序盤15分くらいはワクワクしたけれど、どんどん粗が見えてくるのがつらかった。
それは原作を踏襲しているが故のつまらなさというか、漫画を映画にそのまま落とし込んだらそりゃこうなっちゃうよね…という感じ。

最後の方では、あまりに映画がつまらなく仕上がってるが故に原作の詰めの甘さみたいな部分が再発見されてしまって。
あれだけ独特の地位を築いている原作を、こんな形でクリシェにしてしまったのは罪深いと思う。
(ちなみに私は原作を第7部まで読んでいて、熱狂的に好きという感じではないです。5部がノワールぽくて一番好き)

以下、感じたことを個々に書いていきます。

基本情報

監督:三池崇史
脚本:江良至
出演:山崎賢人神木隆之介小松菜奈岡田将生新田真剣佑伊勢谷友介
原作:荒木飛呂彦

悪かったところ

主要2人の演技が…

観ていて一番つらかったのが、主役の山崎賢人狂言回し的役割の神木隆之介の演技が余りにもあんまりだったこと。

まず東方仗助役の山崎賢人ですが、さすがに役に対して人選がおかしすぎるんじゃないでしょうか(今さら)。
佇まいに説得力がないというか、胸板が薄すぎるというか、背が高く筋肉質なジョジョ世界の主人公を演じるには役不足(誤用)でした。
スクリーンで観ると改めて体つきのみすぼらしさが目立ってしまいますよね。

ジョジョの奇妙な冒険』という作品は非常に危ういバランスの作品だと個人的には感じていて、少しキャラ造形の綾があると所謂「俺TUEEEE」ものに堕しかねない作品だと思います。
そこを絶妙にチューニングしているのが原作で、それは例えばあの独特の絵のタッチの雰囲気だったり、漫画的な表現の中での強さ演出にあるのでしょう。
そのバランスは何十巻ものスパンで培われたもので、2時間弱の映画内で「強さの雰囲気」を演出するにはそれなりの工夫が必要になってくるのですが。
それを怠り、原作のエピソードをなぞって映像化しただけなのが本作であり、山崎賢人の一見強くなさそう感も相まって、観客の共感や畏怖を伴わない「俺TUEEEE」な主人公になってしまっています。
山崎賢人のセリフ回しがあまり上手くないことは目を瞑るとしても、このキャスティングは明らかに映画そのものの質を下げちゃってます。


かっこいいけどな・・・

そして、神木隆之介のダメなオーバーアクトは個人的に意外で残念でした。たぶん神木くんの所為じゃないですが。
確かに原作の広瀬康一くんは、普段引っ込み思案でコミュ障な小動物的キャラクターではあります。しかし、その原作のキャラクター、台詞をそのまま実写にトレースしてしまうと、どうしても変人に見えてしまうでしょう…。
漫画的なデフォルメを現実の人間がやっていたらそれはぶりっ子であり、一番嫌われやすいタイプのキャラになってしまいますです。
他の演者は言うてもキャラクターを自分のものに落とし込んで演技している印象ですが、神木くんは愚直に原作を再現しようとしてしまっていて、それが落とし穴になっているなと。

あと、これは脚本の問題ですが、神木くんの狂言回しとしてのセリフが悉く説明的で不要で、映画全体のペースを乱してしまっています。
仕草と表情だけで十分伝わる箇所でも「え?速すぎて見えなかった><なになに?」みたいな可愛い挙動と言動をするのでクソだなと思って観てました。


これの神木くんとか大好きなんですけどね・・・

映画自体もほめられた出来ではないですが、一番スクリーンに映る2人の演技がその感想に拍車をかけてしまった…。
そういう印象です。

話の展開があまり上手くない

この映画、大きく分けて2つのエピソードを盛り込んでいますが、その配分というか展開の仕方が悪くて2つ目のエピソードが蛇足っぽくなっちゃってます。
1つ目のアンジェロの事件で物語的な起承転結が一度閉じてしまうので、そのあと挿入される虹村兄弟編が非常にいびつ。
今から思い返すとアンジェロの事件が閉じるまでは比較的楽しく見ることが出来ていたし、あの葬式で「俺たちの冒険はここからだ」ENDを迎えていれば、まだ良作と思えたかもしれません。
アクション的な見せ場も対アンジェロ戦をもっと膨らませれば、もともとの発想の奇抜さ含めて新鮮で見ごたえのあるものが作れたと思いますし、なぜ虹村兄弟の話を終盤に持ってきたのか理解に苦しみます。

確かに原作ではアンジェロから虹村という話の流れですし、忠実に原作を再現すればこうなるのでしょうが、この出来では原作再現という手段と面白い映画を作る目的が入れ違ってしまっています。
漫画の連載順にプロットを並べていくことの功罪の罪の部分がはっきり出てしまったなという感じを受けます。
ここは原作の時系列を捻じ曲げてでも、一本の映画としての起承転結は崩すべきではなかったのでは


アクションがだるい

これも個人的には原作を少し捻じ曲げてほしかった部分ですが(とはいえ原作はもっとましだった気がしますが)、スタンド同士の戦いという特性なのか、とにかくアクションに動きがありません
基本的に人物を均等に画面に配置してわさわさ動く→顔のアップになって大きな声で怒鳴るの繰り返しで、起きていることの荒唐無稽さからするとおとなしすぎる絵作り。
ジョジョの実写映画、と聞いて真っ先に期待したのがスタンドバトルなので、これは少し興ざめでしたね。

スタンドバトルと言えば、冒頭で触れた「原作の詰めの甘さ浮き彫り」問題がこの映画の出来の悪さから浮き上がってしまっています。
ネタバレになるので詳しくは伏せますが、端的に言えば最後の仗助vs某で、仗助側の勝利のロジックがひとっつも納得できないというとこです。
それは”治す”なのか?命令遂行は絶対というけどその割に暫くお前ら黙ってみてるだけだったな!など。
原作が勢いで押し切っていた部分を、映画ではその勢いを殺してしっかり見せてくれるので、翻って原作の評価が下がるという誰得状態。

所謂「邦画の悪癖」というべき、「アクション中に長話始める主人公とそれを黙って見てる敵」問題も今作は炸裂しています。久しぶりに見ました、こういうの。

ジョジョというスタイリッシュで時代の先端行ってた漫画がこういう陳腐な演出をもって実写で台無しにされるの、漫画と邦画の、というか荒木飛呂彦三池崇史の「差」を思いっきり見せつける結果にしかなってないです。

良かったところ

序盤は最高!

とはいえいい部分ももちろんあって、というか序盤15分くらいは「面白い!」と思いながら観てました。原作のラインから少し外れていて、三池節が全開でよかったです。

例えば冒頭のアンジェロが殺人現場である行動をとるシーンは音も相まって(いい意味で)生理的に受け付けない印象を強く与えていて、三池作品で言うと『オーディション』とか『インプリント』的なイヤさが最高ですし、
少しコミカル描写ではありますが、アガるBGMと肉体がぶつかり合う仗助と不良のシーンは『クローズZERO』的な見ごたえのあるアクションがこれから見られるんだ(*^○^*)というポジティブな印象を受けるものでした。


こんな感じかなと思ってました

序盤から受ける印象は「良い方の三池作品」であり、いつもの悪ふざけ含めてその路線で最後まで行ってくれればよかったのですが、それ以降は意外と真っ当な原作再現を試みていて、期待を裏切られた形になりました。残念です。

ロケ地選びの秀逸さ

本作は国内ではなく、スペインの「シッチェス」という都市でロケを行ったそうです。
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日本が舞台にもかかわらず、スペイン・シッチェスやバルセロナでの撮影を敢行したことでも話題を集めた今作。

公式サイト見る限り、三池監督は「自分の好きな街だから」と選んだ理由を語っているようですが、ロケ地を海外の古都に置いたこの判断が、少なくとも序盤から中盤にかけて非常にいい働きをしていると思います。
劇中で仗助が「変な髪型」揶揄いを受けるシーンが天丼でありますが(これ自体は寒いですが)、この作品の主要な登場人物はだいたい髪型がおかしいです。比較的まともな広瀬くんですら、オールバックの攻めた髪型をしています。

そんな俗世から浮いたキャラクター達を扱うわけですから、私たちが普段見ている日本の光景ではちょっと違和感が強すぎて、コスプレパーティーの感が強くなってしまいます。
ロケ地を海外にして、ガワだけ申し訳程度に日本風にしたことで、景色の違和感にキャラの違和感が紛れて、そのノイズを消したことは大成功だと思います。

ただ、それも終盤、屋内でのバトルオンリーになると意味がなくなってくるんですけどね…。つくづく虹村兄弟のパートが蛇足だなと思ってしまいます。

まとめ

原作付きの作品の成功/失敗って、作品の出来不出来以前に、原作ファンにどれだけ受け入れてもらえるかが重要なのだと思います。
本作は、ファンへの目くばせを重視して原作を愚直に忠実に再現しようと試みた結果、肝要な「映画としての出来」が許容範囲をはるかに下回ってしまった失敗作ではないでしょうか。

引き続き続編が作られるようですが、その際には「ジョジョを扱う」というおっかなびっくりな手つきを止めることが、何よりファンのための映画になるポイントな気がしています。