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【映画感想】東京喰種トーキョーグール / 良くも(ちょっと)悪くも続編が観たい良作!




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通常2Dで観てきました、『東京喰種』。
面白かった!
原作を読んだことがなかったことと、昨日観たアレがあまりにガッカリなこともあって少し不安だったんですけど、観て良かった!大正解!
期待以上の出来でした。

劇場予告編の大泉洋と音楽に惹かれて観ることを決めたんですけど見どころが他にも十分にあって、少し長い上映時間も気にならない良作でした。
キャストがみんなバッチリはまってて、ストーリーもコンパクトに畳んで、CG含めたアクションの見せ場も文句なし。
個人的にラストの展開はうーん…って感じでしたが、粗のない出来上がりに本当に満足させられました。漫画実写化としては『アイアムアヒーロー』以来の傑作だと思います。どちらも大泉洋が出てて、必要なグロ描写から逃げない映画という共通点がありますね。
そういう意味(大泉洋)では鋼の錬金術師にも期待したいところです…。です…。

劇場の入りはほぼ満席。窪田正孝主演作品ということもあって女の子が多かったです。
ただ、そこそこゴアな映画なのでちょくちょく途中で席を後にする人がいたのはかわいそうでした。CMだと殆ど見せてなかったけど、結構グロイよねこれ。

開始前の予告編、ちょっと長すぎない?暗くなってから体感15分くらい予告が占めてた気がします。
それでも、黒沢清最新作の『散歩する侵略者』とか、吹替版の『スパイダーマンホームカミング』(藤原さんお帰り!)とか初めて見るものも多かったので、そんなに苦ではなかったですけど。


以下、要素別に感想を書いていきます。

「食べ物」と「モノ」の書き分けが徹底されてる

観ていて、まず驚いたのが食べ物を噛む咀嚼音で主人公のカネキの肉体に訪れる変化をしっかり表現しているところ。
冒頭、喫茶店で卵サンドを、パスタを食べる音を誇張して大きな音に編集しています。くちゃくちゃ、ぺちゃぺちゃ。
それはもちろんカネキのお行儀が悪いということではなく、これらが「食事」であること、目の前の卵サンドが「食べ物」であることを印象付けるための演出です。

カネキが喰種となり、「人間以外は食べることが出来ない(食べても吐いてしまう)」ようになると、今までの「食事」「食べ物」がただの「モノ」になります。
我々から見ると美味しそうなハンバーグも、喰種になったカネキが口に入れて聞こえる音は胃が逆流する音、唾液が過剰に分泌される音。
明らかに不味そう、というか食べてはいけないものを口に入れている音になっています。
他にも冷蔵庫の中身をカネキが文字通り漁って食べるシーンで食べ物がはっきり「汚物」として描かれたり、肉じゃがが食玩のような無機質なものに見えたり。
逆に、人肉を喰らうほかの喰種の口からは、冒頭でカネキが卵サンドを食べている時と同じ音がするのです。
ヒトから喰種に致命的な変身をしたカネキの異形感を、食べ物の描写の変化で表現しきったことは素直にスゴイと思いました。
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キャストすごい(すごい)

今作、主要キャストはみんな役にドはまりしていたように思います。

主役の窪田正孝はもちろん最高。
ヒトだった頃の童貞感、喰種になってからの狂気、すごく巧みに演じ分けていてさすがでした。
たぶん劇中では大学一年生だと思うんですが、28歳にしてあの年頃の男特有の透明感、頼りなさを醸し出せるのはなぜなんでしょう。尊いな…。
そしてアクションも『HiGH&LOW』組だ!と再確認させてくれるカッコよさ。
鈴木伸之さんとのタイマンはちょっとCGが悪さしたのでともかく、清水富美加さんとの訓練シーンは昨日観たアレよりはるか上を行ってます。
人間としての弱さと喰種の異形と超身体能力。
私は原作を読んだことないので分かりませんが、このカネキというキャラクターの二面性を扱うにはこの人しかいない、というべきハマりっぷりでした。

他にぐっと来た人を上げるなら、
蒼井優はちょっと怖すぎませんかねあの人。
waonカードのイメージしかなかったのでほわほわ優しい人だと思ってましたが、今後もし善良な役で出てきても絶対信用できません。
私の中ではアウトレイジ観た後の小日向文世みたいなポジションに収まりました。
清水富美加はこれが改名前最後の仕事なんですか?
どうしても暗くなりがちな作品全体の雰囲気の中で、彼女とカネキのやり取りは心温まりましたし、アクションも見ごたえあっていい女優さんだなと思いました。

大泉洋は「おかあさんだよ(ニッコリ)」が私的今作ナンバーワンのシーンで思わず声出して笑ってしまったのですが、相変わらず演技力光ってましたね。ブリーフケースをなでる手つき一発でマッドな変態感出しててすごいなって感じ。
そういえば始まる前、『探偵はBARにいる3』の予告編が流れた時、周りでフフッて笑い声がしてたんですけど、ああいう従来の大泉洋じゃない今回の役でもしっかり存在感示せるって、稀有な才能ですよね。
ハガレンでもマッドサイエンティスト役やるし、そっちでも期待したいですね。

鈴木伸之は「桐島のうざいバレー部」のイメージがまだ私の中にあるので、今回、前野智哉と「桐島バディ」を組んでくれてオッてなった。
高校時代にカースト上位だった奴が社会人としても優秀で、底辺だった奴がポンコツのままっていうリアルな感じがとても辛いとも思ったけど(関係ない)、それでも2人が一瞬でも分かりあうシーンがとても好きだったし、亜門は絶対に天そば食べに行ってあげてね(涙)。
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半分ヒト、半分喰種、だから…?

喰種はヒト以外食べることはできないから、元ヒトであるカネキは葛藤したりするわけですが、今作、その葛藤が特に解決されたり進展したりはしません。わめいてるだけです。

生きるためには他の生き物を食わないといけない、というのはもちろん喰種だけでなく私たちヒトにも同じことが言えて、ただ私たちの大半はその食うプロセスを見えない他者に委託することでその摂理から目を背けることが出来ています。
そうした欺瞞に浸かっていられる私たちに対し、この映画に出てくるカネキは誰かを殺して食わないと自分が死んでしまうという観たくない現実を突きつけられます。
作中でカネキは先輩喰種に「お前はヒトと喰種、両方の世界に生きる存在だ」と言われますが、これは喰種としてヒトを食べながら共存し現実との折り合いをつけることを選ぶか、それともヒトとして人を喰うことは出来ないという自我を曲げずに死ぬかという問いです。
その問いにどうカネキは答えるのか、というこの物語の根幹たるべきテーマは、私たちにも刺さるものです。
なぜなら私たちもまた、ほかの生き物を殺すという「罪」を犯さずして生きることは出来ないからです。
それ故に観客は興味を注いでこの物語のラストを注視するのだと思います。

ですが、この作品、「生きることと罪」を問うと大きく振りかぶって、その腕を上げたまま終わらせてしまった感じがあって、そこに物語として、カネキとしての結論を出しません。
例えば、ネタバレになるので詳細は伏せますが、物語中盤ではその葛藤の中で、カネキ的に「最もやったら後悔すること」をやりかける(未遂)シーンがあります。
ここで一度、「喰種になってしまった以上ヒトを食わなければ生きていけないのだ」という命題にカネキは直面しますが、しかし、カネキがそのことについて悩んだり成長したりする描写はありません。ただ、エピソードの一つとして消化しているだけになってしまっています。
けっきょく最後までカネキがヒトを喰らう描写はありませんでした。これは逃げだと思います。

この場面が象徴的ですが、せっかく難しいテーマを掲げているのですから「カネキくんこんなことになってかわいそー」から一歩進んで、現実と折り合いをつけるのか、自我に殉じるのか、テーマに対して何らかの答えがほしかったですね。
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終わりに

とはいえ、漫画実写化という一種のお祭りにそこまで大きな命題を負わせるのも無粋ですし、私は単純に適度なゴアと面白いストーリーにすっかり満足しています。
良い感じの世界観を原作から引き継ぐことに成功しているので、続編希望!です。喰うか喰わないか問題を決着付けてほしいのもありますし。

『東京喰種トーキョーグール』、良実写化として今年名前が残る一本じゃないでしょうか。
原作ファンにとってこの作品が喜びでありますように。