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【映画感想】ジョン・ウィック:チャプター2   終始ニヤニヤ楽しい、でもちょっと「怖い」傑作



基本データ

監督:チャド・スタエルスキジョン・ウィック
出演:キアヌ・リーブス、コモン、ローレンス・フィッシュバーンルビー・ローズ!ほか
配給:ポニーキャニオン 2017年/アメリカ
原題:John Wick : Chapter 2
HP:映画『ジョン・ウィック:チャプター2』オフィシャルサイト


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総論

 TOHOシネマズ新宿にて字幕2Dで鑑賞してきました。客入りは座席数に対して半分くらい。平日の昼間にしては多いかなって感じで、この映画の期待値の高さを再確認。年齢層はバラバラで、デートムービーじゃないし一人客が多かった。
 本編開始前の予告編で印象深かったのはワンダーウーマン。悪名高かった「恋を知らない女の子」路線から一転、「女戦士」の要素が強調されたものに変わっていて、やるやんけ!って感じ。変わらず楽しみな一本っすね。

映画『ワンダーウーマン』本予告【HD】2017年8月25日(金)公開 - YouTube

 閑話休題
 非常に楽しい映画でした、ジョン・ウィック チャプター2。CGに頼らないオールドファッションかつ新鮮なアクションと、異常に掘り下げ可能で中二病チックな「裏社会」の描写が素晴らしかった…。アクションのレパートリーの多さ。カースタントからの柔術からのまたカースタント!みたいな展開の目まぐるしさ。仕事の下準備を潜入プラン/スーツ仕立て/武器調達でカットバックしながら見せる「良く分らんがカッコいいぞ」感。難しいことを考えずとも、ただただ目の前の映像が楽しい!ずーっとにやにやしながら観れる。
 ただまあ、終わった後に「じゃあどういう映画だったっけ?」と思い返すとあんまり何も無いというか、アクション過多でストーリーを語ることを少し怠っていたようにも思える。キアヌのイメージビデオと言われても仕方ないというか。とはいえ何もないわけではなく、全体を通して「一度この世界に触れたら最後、それが小指の先だけでも、お前はもう逃れられない」というテーマははっきり示されていて、前作の勧善懲悪っぽい爽快感から離れて「裏社会こわー」が際立つようにはなっている。
 大体、これを観に来る私のような観客は小難しい倫理や思想じゃなくて、カッコいいキアヌを観に来てるだけなので中身空っぽでも問題ないっちゃない。惚れた弱みというか、『ジョン・ウィック チャプター2』はロクに働きもしないだらしない男だけどそれでも料理はうまいし何時でも私の愚痴を微笑みながら聞いてくれるから好きみたいな感じになってる。
 ラストの絶望感はなかなか次回への引きとして素晴らしい。このシリーズが全3部作だということは以前から言われていたし、完結編であるチャプター3がただただ待ち遠しい出来でした。
 

各論

前作以上に実在感のあるアクション

 ストーリーとか、脚本とか、そういう”余計”なものを極力削いでとにかくアクション!アクション!アクション!

ローマの世界遺産カラカラ浴場で撃ちまくる!『ジョン・ウィック:チャプター2』本編映像 - YouTube

 ベースとなるアクションは前回と同じ。ガン+カンフーというよりもガン+柔道というべき、投げ技と近接ヘッドショットを組み合わせたシリーズ独特の型がばっちり決まっている。2時間きっちりアクションシーンをやり切ったら途中で飽きてしまうのではと思いきや、やれカースタントだ、やれ洞窟での集団戦だ、地下鉄でのナイフ格闘だ、お待ちかねの鉛筆アクションだ!、とアクション映画のBEST盤のような多士済々四季折々。さらにBEST盤だけあって音つくりもしっかりしていて、骨と鉄がぶつかる音、熱が伝わってくるタイヤの摩擦音、ショットガン、拳銃など多種多様な銃声がいちいち生々しい。そこに死があることを嫌でも感じさせる音、という意味では先日鑑賞した『ハクソ―・リッジ』を思い出した。MCU的なCG祭とはまた違った趣あるアクション。
 そんなアクション映画のBEST盤の中に新譜をそっと付け足すのが、この映画のアクション映画としての意識高さだと思う。ガンフーならぬガンJU(上手くない)の真新しさは言うまでもないが、特筆すべきは中盤、コモン演じる旧知の殺し屋との銃撃戦だろう。これ、ちょっと今まで見たことない緊迫感あふれるシーンで興奮した。そのあとの地下鉄内でのやり取り含めてこの映画で一番カッコいいシーンだと思う。クラシカルなアクションの中にピリッと新鮮な絵が入ってくる。これこそジョン・ウィックの大きな魅力であり、キアヌとスタエルスキ監督コンビの神髄ではなかろうか。

『ジョン・ウィック:チャプター2』監督徹底インタビュー!ベースにあるのは何とギリシア神話!? | シネマズ by 松竹

 あと全体通してどことなくアクションに混じるコミカルさがツボ。たぶん70人くらい死んでるんだけど、その中でスモウファイターの異形さとか、階段を2人で転がってく件を天丼したり、地下鉄の乗客のこうなったらそうするしかないよねって態度やアナウンス、まじめにやってるが故の笑いが生まれて劇場がほっこりする瞬間が何度となくあった。それも外すわけにはいかない。

魅力的な世界観とカタキ役たち

 前作『ジョン・ウィック』を初めて見た時驚いたというか痺れたのは、主人公ジョナサンを取り巻く「裏社会」の作りこみがすさまじく奥深いこと。裏社会でのみ流通している金貨や、闇の住人のギルドのような役割を果たしているホテル・コンチネンタルなど、ジョナサンがいる「社会」を確かにリアルに感じることのできる練りこまれた設定が素晴らしい。本作の中でも例えばコンチネンタルの管理人で、世界の殺し屋稼業を仕切っているウィンストン(イアン・マクシェーン)の初登場シーンは先の金貨を業者というか職人から納品しているところ。その取引が後の伏線に…とかはないが、また一つこの世界の奥行きが深くなった。ローマ支部でのお買い物、「テイスティング」のシーンや、バウンティハンター向けに賞金首の情報を一斉送信する「アカウント部」など、作中で深く描かれないが、とにかくカッコいい何かに満ち満ちている。行動の一つ一つにカギ括弧をつけたくなるというか、この業界の「テイスティング」とは?「アカウント」とは?に作り手の美意識もとい中二病を感じる回答がなされていて、もうすごい。右腕が疼く。

銃がズラリ!映画『ジョン・ウィック:チャプター2』特別映像 - YouTube

↓なんかホテルコンチネンタルを舞台にした群像劇のドラマが企画されてるとか↓

ドラマ版『ジョン・ウィック』詳細判明!コンチネンタル・ホテルを舞台とした群像劇、キアヌ・リーブスも出演へ | ORIVERcinema

 そして、ネタバレになるから詳細は省くけど、なんやかんやでジョナサンと殺しあうことになる「闇の住人」の皆さんがカッコいい…。中でもメインの敵であるイタリアカモッラの番犬アレスが、というか!アレスを演じたルビー・ローズが!滅茶苦茶カッコいい!!最高である。

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 「静寂に生きる」の言葉にふさわしく、コミュニケーションは全て手話。繊細で軽やかな手話から繰り出される「ファック」や「ぶっ殺す」が最っ高に綺麗で。死ぬときはこの方に死に際に手話で捨て台詞を吐かれたい。そして本作におけるマイ・ベスト・ルビーはカモッラのボスに向けたどや顔ウィンクですね。抱かれたい…。ただアレス様の珠に傷なとこは思ったより強くないところかな…。結構引っ張った割には大したことなかったね。
 もちろんコモンの殺し屋も味があってよかったというか「プロの礼儀」で皮肉られたキアヌが同じ言葉を捨て台詞にするシーン最高。多くは語られないけどジョナサンと旧知の仲ってこの作品のあるあるだけど、そこがやっぱりアクションに悲哀とか混ざっていい感じだよなー。

うす味の、でもコブシのきいた明確なテーマ

 ずーっとアクションやってるし、この映画単体でのゴールは最初っから「家を燃やしたアイツ、殺す」なので非常に単純なつくりの映画ではあると思う。まあ上でも書いたけど、娯楽アクションに難しいテーマとか忍ばせないっていうのは普通に普通な考え方なのでそれでもいいと思う。面白かったし。
 それでもこの映画の根底には上で書いた「一度この世界に触れたら最後、それが小指の先だけでも、お前はもう逃れられない」という闇がひたひたと湛えられていて、ジョナサンはその闇に誘われてどんどんドツボにハマっていく。この、「すぐ辞めるつもりだったのに、ほんの少しのつもりだったのに」「…それで許されると思ったか?」みたいな感じはリドリー・スコットの『悪の法則』を彷彿とさせる。にやにや笑いながら映画を観つつ、ジョナサンの取れる選択肢が段々なくなっていくのに少し震えを感じた。

映画『悪の法則』予告編 - YouTube

 「血の刻印」から解放されても、第3勢力であるホームレス軍団には借りを作ってしまったし、何よりジョナサンは「もうこれ死ぬしかないよね」って決断をラストで下してしまった。足を洗って普通の世界に戻ることは明らかに映画の冒頭より最後の方が難しくなっている。一方で、ジョナサンが足を洗うことを本気で望んでいるか?はかなり怪しくなってきているのも確か。普通の世界に戻ったところで妻は死別し家は燃え愛車は2030年まで帰ってこない。かろうじて普通の世界とのつながりを保っているのが、妻の遺品のペンダントと名無しのわんちゃん。
 実はジョナサン自身もこの映画を通して、ヒリヒリした闇の住人の世界に留まることを望む方向に心が動いてるんじゃなかろうか。じゃなきゃ最後の殺しがああいう形なのは不自然でしょう。次回作である完結編で、ジョナサンがどちらの世界に針を振るのだろうか。
 前作が「舐めてた相手が実は殺人マシーンでした」モノだとすれば今作は「舐めてた世界が私を殺しに来ました」モノじゃないかな。この映画は決して頭空っぽわいわいアクション映画ではなくて、構成の重心が明らかにおかしいとはいえ、「闇社会」を扱う作品としてこれ以上ない真っ当なテーマを掲げているのだ。…と、この映画にベタぼれしてる私は無批判にキアヌと監督をたたえるのである。

結論

 前作の「最高!」な部分、すなわちアクションと世界観を過剰にふくらました2作目。楽しさ倍増中身は半減だけど、それでも次回作への目くばせ含めて物語がいい感じに転がっている。GotG2もこんな感じの2作目だったけど、キャラ物の続編はこう作るのが正しく面白いのかなと思った。とにかく楽しい2時間でした!次回作早く作って!